目次
見送り
夕暮れどき
母が手をふって
私を見おくってくれた
私は何度もふりかえり
母の手を見かえした
もう会えない訳ではないよ
80にもなる母が
50すぎの私を
まるで幼な子を
見おくるように
いとしく せつなく
手をふる
「帰ってゆくんだね
又 おいでよ
まってるからね」
母のつぶやきが
たまらなく耳もとに
きこえる
病弱で
母に甘えて育った私を
母は みはなさず
いつでも守ってくれた
それなのに
50にもなった私を
母はまた見送ってくれる
「又 おいでよ
おかえり」と
待っていてくれる。